yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

士業の交際費って???

弁護士と司法書士の交際費について面白い判例・裁決がありましたので紹介いたします。


まず弁護士さん

東京地方裁判所平成21年(行ウ)第454号更正処分取消等請求事件(棄却)(控訴)
国側当事者・国(仙台中税務署長)
平成23年8月9日判決
【弁護士業の必要経費/弁護士会役員の交際費等】

判  示  事  項

5 以上のような事情の下で原告が弁護士会等の役員として行う活動を社会通念に照らし て客観的にみれば、その活動は、原告が弁護士として対価である報酬を得て法律事務を行う経済活動に該当するものではなく、社会通念上、弁護士の所得税法上の「事業」に該当するものではないというべきである。
6 そうすると、弁護士会等の役員として出席した酒食を伴う懇親会等の費用については、これらが弁護士会等の役員としての活動との関連で支出されたものであるからといって、原告の事業所得を生ずべき業務に直接関係して支出された必要経費であるということはできない。

 判決年月日 H23−08−09


簡単に言うと、弁護士会の役員としての活動、役員の懇親会等で使った飲食代などの費用は、弁護士として収入を得るためには直接関係ないため経費として認めないというものです。

私自身も税理士会の活動として使った交通費などの経費や税理士同士の懇親のための飲食代はもちろん経費として落としていますし、この手の経費が認められないとは聞いた事がありません。

税理士会でも各支部、近畿税理士会、日本税理士連合会などの役員になると経済的なメリットが特にあるわけではないのですが、かなり時間と労力お金が必要です。寡聞にして税理士会の役員の方が役員としての活動費を経費にしていないとは聞いた事がありません。
また経費として認めないとなると税理士会の役員になる人が激減し、税理士会自体の存続が怪しくなると思いますね。同じような例は税理士では出ないと思います。


同じような裁決で少し古いですが司法書士さん

(必要経費) 司法書士業を営む審査請求人が、同業者等との交際費等として支出した金員を、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないとされた事例(平成9〜11年分所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・平14−03−11裁決)

〔裁決の要旨〕

2 認定事実を法令の規定に照らして判断すると、1司法書士会会員との接待交際については、同業者間の懇親を深め、その業界の情報交換のためであったとしても、その交際が請求人の業務を遂行する上で直接必要である部分と家事上の経費の部分が明確に区分できないこと、また、2請求人が卒業したA大学の校友会及びB会(主として国際親善、社会奉仕、文化の向上及び会員相互の親睦等を目的とする団体)会員については、A大学校友会及びB会は任意に組織された団体であり、その構成員に請求人の得意先の関係者が含まれていたとしてもこれらの会の趣旨は請求人の業務とは直接関係ないこと、家事上の経費部分と明確に区分できないことから、これらの者との接待交際費を必要経費に算入することは認められない。
3 本件ゴルフプレー代は、いずれもB会主催によるゴルフ大会のプレー代であり、本件諸会費は、B会主催によるゴルフ大会での懇親会費及びA大学校友会に対する会費であることから、これらの支出は必要経費に算入することは認められない。

 裁決年月日 H14−03−11


これも簡単に言うと、上の例と同じように司法書士同士の飲食は交際費として認めない。また出身大学の親睦団体における接待交際及びゴルフのプレー代は経費として認めないという裁決ですね。
これもまあ出身大学の親睦団体の交際費は別としても、同業者間の飲食代を経費として認めないのは上の例でもそうですがやり過ぎでしょう。
日本全国の会社の社長は同業者との飲食代は当たり前のように経費で落としてますし、それについて税務調査で指摘された事も一度もありません。
また出身大学の親睦団体における交際費も私なら経費で落としますね。この採決した人は士業における営業努力の大変さを全然わかっていません。やはり士業がこの手の団体に所属する事自体営業目的で参加する事が多いと思いますし、実際に仕事につながるケースも数多くあると思います。
またゴルフのプレー代をどこの誰と行ったかなんて、税務調査で調べられたこともありませんし、この人の場合は行ったとしても数回、数万円の話だと思いますが、なんでこんな少額のゴルフ代でもめるのかなあと思いますね。


所得税における必要経費の定義がやはり一般的な法人税の経費より厳密に判定されるのは条文上仕方がないところがありますが、上記2人のケースはやはり特殊な事例だと思いますね。

まあただ一つ言えるのは、こんな事で税務署ともめて裁判や裁決までいくとは一般的に考えにくいため、かなりこのお二人は税務調査の際、税務署とやりあって引くに引けなかったのだと推察します。

士業の方は申告も自分でされる方が多いですし、実際税務調査でも税理士なしで一人で立ち会われる方も多いと思います。やはり士業といえども税理士を顧問にして税務調査立会の際にも立ち会ってもらう事をお勧めしますね。

不動産会社のおける合理的な消費税節税方法

この前、顧問先の不動産会社の消費税を計算していてものすごく不合理を感じました。
消費税というのは原則的にはもらった消費税から支払った消費税を差し引いて納税するのですが、不動産の場合は土地には消費税が課税されませんので土地の売上は非課税売り上げとなります。

それは特に問題ないのですが消費税を計算する場合、差し引く消費税である仕入税額控除の計算は原則的な計算方法である個別対応方式の場合に控除出来るのは課税売上に直接要した経費に係る消費税共通に要した経費に係る消費税課税売上割合を乗じて計算した消費税となります。

  ※課税売上割合とは会社全体に売上の中で消費税が課税される売上の割合


例えば不動産会社が決算で仲介手数料が2100万円、土地の売上が3000万円、共通に要した経費に係る消費税(主に販売費及び一般管理費にかかる消費税)が70万円あるとします。


この場合、納める消費税は

100万円※−70万円×2000万円/2000万円+3000万円 = 72万円

※2100万円×5/105=100万円


となります。


でもこれをよく考えると、土地の仕入値が例えば2900万円とすると会社の利益としては100万円しか貢献していないのに、課税売上割合には土地の売上の総額で計算しなければなりません。
現実的には仲介手数料の方に大きな労力と経費がかかるにも関わらず、課税売上割合で計算してしまうと大きな不合理が生じます。

実際その顧問先の場合、今期は土地の売買が多かったため例年より消費税がかなり増えました。


ただ消費税法では自ら合理的と思われる割合を「課税売上割合に準ずる割合」として税務署長に承認申請を出して、認められた場合には計算において「課税売上割合に準ずる割合」により計算する事が可能です。


例えば、事業に専従している従業員の数や床面積の割合、取引件数割合などが通達で例示されています。


今まではこの制度利用した経験がないですし多くの税理士も申請した事がないと思いますが、例えば上記の例で利益に応じた割合で計算する事を承認された場合

100万円−70万円×2000万円/2000万円+100万円 = 44万円 


と大きく納税額が減りますしこちらの計算方法の方が企業の実態に合っていると思います。その他通達で例示している取引件数割合も実態に近いような気がします。

ただ税務署長が承認する基準が判りませんので、この顧問先については最初は取引件数割合で承認申請を出してみて、その次に利益割合で承認申請を出してみようと思います。

他の不動産会社でこんな計算方法が承認してもらったという事例があればコメントいただけると嬉しいです。

事前確定届出給与を使った決算対策


基本的に法人においては役員に対する報酬は定期同額給与(毎月決まった一定額)以外は損金として認められないのですが、事前に支給額を届け出ることにより臨時的な給与も損金として認められる制度があります。

これを事前確定届出給与といいます。

この届出書には支給日と支給金額を記入して提出するのですが、この届け出た金額以外の給与を支給した場合その支給額は損金として認められません。
例えば事前確定届出給与で支給額を100万円として届けた場合、50万円を支給したら50万円が損金として認められません。同じく150万円支給したら150万円が損金として認められません。


ただこれを支給額を0円とした場合にはどうなるでしょうか?


この場合は損金として認められない金額が発生しないので、課税所得には一切影響がありません。つまり支給しなくても税法上のペナルティーは一切発生しません。


しかしよく考えてみるとこれを利用した利益調整が簡単に出来るのではないでしょうか?


例えば3月決算法人の定時株主総会で、社長に対する事前確定給与を翌決算期直前の3月に300万円支給する決議をして届出をしておきます。そして決算期直前で大きく利益が出そうなら事前確定給与を支払い、あまり利益が出そうにないなら支給しないようにすれば決算対策としてかなり有効です。


この本ではP130で

税務調査事例からみる役員給与実務Q&A

税務調査事例からみる役員給与実務Q&A

届出通りに支給しなかった事につき正当な理由がある事を税務署に通知し事後のトラブルを回避する意味でも、臨時改定事由による変更の届出の届け出を提出すべきと考えられます。

としています。


またこの本ではP182で

徹底解説 役員給与―法的根拠・判例・最新通達に基づく税務・会計・法律の取扱い

徹底解説 役員給与―法的根拠・判例・最新通達に基づく税務・会計・法律の取扱い

特段の事情もなく、こういった行為を繰り返すことは、「損金枠の事前確保」として利用される事を嫌うであろう事前確定届出給与の性格からすると好ましくない。そのため税務調査等において支給しなかった理由を厳しく追及される可能はある。

として

このような事例が頻繁に発生すれば、制度見直しにより、例えば翌期の事前確定届出を認められない措置が講じられる可能性も考えられる。

と述べています。


どちらの本も調査時のトラブルの可能性を指摘していますが、いずれにせよ現行法上ではこの手法を税務署がどんなに気に食わなくても否認出来る金額がない以上どうする事も出来ません。

ただ金子先生が述べているように現状では当局もどうする事も出来ませんので、今後事例が頻発するようなら法改正される可能性は大きいと思います。

今のところは現行法上は違法でも何でもないので、あとは利用するかどうかは個々の経営者の判断といったところでしょうね。

外国税額控除の腑に落ちない点


たまには税金の話を…(笑)


一般的な会計事務所ではあまり得意でない法人税の外国税額控除、私の場合は顧問先に一社適用を受ける会社があり何回か申告書作成しましたが、一点だけ腑に落ちない点があります。

外国税額控除とは、内国法人が外国において直接・間接的に支払った外国税額を日本で支払う日本の法人税額から一定額を控除できる制度です。

日本の法人税は全世界課税、つまり外国で稼いだ利益にも課税されます。その一方でその利益を稼いだ国でも課税されるケースがありますので、その場合は2重課税となってしまうためこの制度があります。

この制度自体とても複雑でこのテーマだけでもかなりの分量の書籍が出来るくらいなので詳細は述べませんが、この前の顧問先のケースはこうです。

申告所得は赤字、外国に納品した仕事の一部がその国の源泉徴収の対象となるため10%の源泉徴収をされている。

このケースでは、法人税が発生しないためその年度では控除出来ません。


この場合はとる手段は2つあります。

  • その外国税額を損金にしてしまう事。もちろんこの場合は、控除は永遠に不可能です。
  • 控除出来る外国税額は3年間繰り越す事が出来るため、繰越控除の対象とする事。この事により将来法人税が発生するときには控除が可能です。ただこの場合は、税額控除の適用を受ける時と同様に、課税所得にその外国税額を別表4で加算する必要があります。


もちろん控除できる方が有利と判断して繰越控除の適用を受けるため申告所得に加算して申告書を提出しました。

でもよく考えると、繰越控除の適用が受けられるのは過去3年間分です。もし次の期以降も3年間赤字の場合は、繰越控除額はそのまま適用外となってしまい、所得に加算した事実だけが残り何か不合理に感じます。

出来れば適用外になる繰越税額は、その適用外となる事業年度の課税所得から減算できるようになれば、整合性が取れてすっきりとするのですが、今のままだと腑に落ちませんね。

交際費の枠の拡大って効果あるかなあ?

今月の16日に追加の経済対策として国会に提出されていた租税特別措置法の改正案が通りました。
その中に中小企業の交際費課税の軽減として、現在の定額控除限度額を400万円から600万円に引き上げられました。
つまり国がどんどん交際費を使うことを奨励しているわけです。
しかし数多くの顧問先を見ていますとほとんどの会社の交際費は400万円の枠内で納まっており、数は少ないですがよく飲みにいく社長(笑)なら400万円どころか600万円をはるかにオーバーしているのが現状だと思います。

従って今回の改正はほとんどの会社にとって関係なく、よく交際費を使う会社には減税となり、枠が増えたからといって交際費が増加するとは到底思えません。

どうせするならこんな中途半端な事はせず、試験研究費の特別控除のように例えば1000万円までなら使った交際費の10%を税額控除する制度にしたら面白いと思いますが・・・。

どちらにせよ国が飲食を奨励するなんてなんか変な感じですね。

ゴルフ会員権をめぐる税務事例

顧問先で大きな含み損のあるゴルフ会員権を持っている会社があって、今期あたりに何らかの処理をしたいという相談を受けました。
単純に外部に売却するかどうかも含めての今後検討する必要があるためアマゾンで購入。

判例・裁決からみたゴルフ会員権をめぐる税務事例

判例・裁決からみたゴルフ会員権をめぐる税務事例


色々調べていたら、「中小企業の会計に関する指針」にゴルフ会員権の評価の項目があります。

38 ゴルフ会員権
(1)ゴルフ会員権の評価
 ゴルフ会員権は、取得価額で評価する。ただし、ゴルフ会員権の計上額の重要度が高い場合で、以下の要件に該当するときには、減損処理を行う。
1.時価があるゴルフ会員権・・・時価が著しく下落したとき
2.時価のないゴルフ会員権・・・発行会社の財政状態が著しく悪化したとき

(2)預託保証金方式によるゴルフ会員権を減損する場合の会計処理
預託保証金方式によるゴルフ会員権の時価が著しく下落したことにより減損処理をする場合には、帳簿価格のうち預託保証金を上回る金額については、まず直接評価損を計上し、さらに時価が預託保証金の額を下回る場合には、当該部分債権の評価勘定として貸倒引当金を設定する。ただし、預託保証金の回収が困難な場合には、貸倒引当金を設定せずにゴルフ会員権から直接控除することができる。
「中小企業の会計に関する指針」平成20年度版 P22

この本のP171では、預託金会員制のゴルフ会員権の評価損計上は税務上認められないとはっきり書いてあり、私も以前からその認識でした。しかし「中小企業の会計に関する指針」では、減損処理をするようはっきりと記載しています。
上場企業と違い中小企業においては、税務上認められない評価損を計上する事はまずないと思います。まだ節税メリットがあるならともかく、金融機関の評価も下がり各種経営数値が悪くなる事を会社が自ら行う事はありません。
しかしよくみるとこの「中小企業の会計に関する指針」のゴルフ会員権の評価については、例えば「時価が著しく下落」とありますが、どのような状態が「著しい下落」が述べていませんし、「財政状態が著しく悪化」についてもどのような状態か述べていません。
このあたりは「中小企業の会計に関する指針」の有価証券の細かな規定とは違い、あまり強制的にならないで評価損を計上するかどうかはその企業の判断に任せたのだと思います。

リース会計自分用まとめ

本年度4月1日以降に契約したリース契約について

ケース 車を3年リース
車両価格 300万円 頭金 50万円 残価設定 3年後 100万円 リース料総額 170万円


購入時

リース資産 320万円 / 現金    50万円
              / リース債務 270万円

減価償却

50万円+170万円=220万円
220万円×その事業年度のリース期間月数÷36ヶ月=減価償却費

消費税

仕入税額控除 リース契約締結事業年度に220万円の消費税額相当額を控除
残価設定100万円は控除対象とならず

その他

3年後のリース終了時にはリース資産100万円リース債務100万円が残る。