yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

特殊支配同族株主の役員給与の損金不算入

一応、税理士なので税金の話もしたいと思います。

平成18年度の税制改正により「特殊支配同族株主の役員給与の損金不算入(法人税法第35条)」という制度が創設されました。

この制度は簡単に説明しますと、社長と同族関係者が株式の90%以上を所有し、また常勤役員のうち社長を含む同族関係者の役員の数が役員全体の半数をこえる場合には、その会社が社長に支払う給与のうち給与所得控除相当額は、法人税を計算する上で経費として認めないという制度です。

簡単な例で言いますと個人の事業で1000万円の利益が出ている場合、その1000万円に対し所得税が発生します。

この事業を法人で行い、利益相当額全額を社長に給与として支払う場合、法人税は法人に利益が出ていないので発生しません。そして社長は1000万円の給与を会社よりもらいますが、実際に税金がかかるのは1000万円から給与所得控除額 220万円を控除した780万円に対して所得税がかかります。

すなわち法人成り(個人事業を法人設立して法人で行う。)をすると、給与所得控除の分所得税の節税になるのです。

今回、上記の要件を満たす法人は実態は個人事業と変わらない「特殊支配同族会社」として、上記給与所得控除額220万円は法人の経費として認めないこととなりました。

これはあまり審議もされずにいきなり出てきたような感じで、税理士業界でもびっくりしています。つまり節税目的の法人設立を規制しようという国の方針の大転換なのです。

なぜ大転換というと統計は取った事はないでしょうが、日本の法人はかなりの割合の法人が節税目的の会社だからです。

私たちは今まで顧問先が個人事業で利益が伸びてきたら必ず法人成りを勧めていました。医者や芸能人が医療法人を作ったりマネジメント会社を作ったりするのも同じ理由です。そのような時代が何十年と続き政府もそれを認めてきたのです。
しかし今回、国は税法上「特殊支配同族会社」は会社ではなく個人商店とみなしたわけです。
このような政策の大転換がたった一条の条文で行われる事にびっくりするとともに、政府の説明不足の感が拭えません。