yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

長期傷害保険

税理士なのでたまには税金の話をします。

さる18年4月28日に国税庁よりある回答書が公表されました。
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/02/houzin/5034/01.htm

この制度は、「同業者団体からの文書回答制度」とよばれ同業者団体が国税局に「この処理でもよろしいでしょか?」と事前照会する制度で、国税局がそれについての回答をするものです。

しかし今回の事前照会と回答は税理士としての立場から見るとこの保険を販売してきた保険会社のいい加減さに少し腹が立ちますね。

生命保険会社は以下のように言い訳をしています。

さて、この度法人を契約者とする「長期傷害保険(終身保障タイプ)」に関して、支払保険料の税務取扱いが明文化されることになりましたのでお知らせいたします。
長期傷害保険に関しましては、これまで個別通達等の規定が存在しなかったことから、類似商品であるガン保険等の通達が類推適用されることを前提にご案内しておりましたが、先般税務当局より本商品は一部資産計上するのが妥当との見解が示されました。これを受け、既に複数社にて販売が行われていた商品であったことから、統一的な税務取扱いを確認する必要があるとの判断にもとづき、税務当局の照会内容について、社団法人生命保険協会を通じて協議してまいりました。
平成18年3月31日付けにて、「同業者団体等からの文書回答制度」にもとづき。「長期傷害保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて」を国税庁に提出し、平成18年4月28日付で別紙のとおり回答がなされました。これにより、長期傷害保険の税務取扱いは、照会文書の内容に従い税務処理されることになります。
某生命保険会社 「長期傷害保険」税務取扱いのご案内 より抜粋

この文章はもっともらしく書かれていますが、読めば読むほどいい加減な内容で疑問がわいてきます。(以下感想のため口語調)

(案内文)長期傷害保険に関しましては、これまで個別通達等の規定が存在しなかったことから、類似商品であるガン保険等の通達が類推適用されることを前提にご案内しておりましたが…

(感想)よく言うよ。自分たちの勝手な解釈で積極的に節税商品として売り込んでおいて今更「ご案内」だなんて無責任な言い方だなあ。営業マンが現場でどんな売り方してきたか把握してんの?

(案内文)先般税務当局より本商品は一部資産計上するのが妥当との見解が示されました・

(感想)それって一般企業の税務調査で問題になったの?。それとも国税局から生命保険各社に直接連絡があったの?なんか裏でこそこそやっている雰囲気を醸し出しているなあ。

(案内文)「長期傷害保険(終身保障タイプ)に関する税務上の取扱いについて」を国税庁に提出し、平成18年4月28日付で別紙のとおり回答がなされました。

(感想)この質問文書を簡単にまとめると、「従来全額損金で処理できるとして売り込んできた保険の取扱いについて、今後は3/4を資産計上することにしてよろしいですか。」という内容やね。
ちょっと待ってよ。自分たちが自信を持って損金処理できると解釈して売り込んできた商品なら、「こういう根拠でこういう事だから、全額損金処理してもOKですよね。」という質問文書にするべきじゃないないの。

(案内文)これにより、長期傷害保険の税務取扱いは、照会文書の内容に従い税務処理されることになります。

(感想)なんでそんな勝手なことを言うのかなあ?おたくが申告するの?いつから?国税局は回答書で「この回答内容は国税庁としての見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではありません。」って言っているわけでしょう。
それなら損金経理を選択して申告する納税者を、自社の解釈に十分自信があって販売したであろう保険会社が何らかの形で支援するのが筋じゃないの?

(以上感想終わり)

生命保険は税務上の取扱いが法令・通達等の改正で変更になるのはよくあることです。生命保険の勧誘においても設計書等に必ずその事について一文がいれてありますしそのことは問題にしません。
今回はそれ以前の次元の話です。

つまりこの保険を販売していた保険会社は、当初から全額損金とならない保険を節税商品として積極的に営業をして販売しておきながら、まるで今回取扱いが変更されたような話にして責任逃れをしているだけじゃないですか。

また今回の大問題は、法令・通達の場合だと取扱いの開始日が決まっており、過去に遡る事はありません。しかし今回は回答書という形で行われなおかつ専門誌によれば国税局はこの保険に対しての見解は当初から一貫していると発言しているらしく、過年度に遡って修正申告を求められる可能性があるということです。

まあどのみち販売した責任も取らないでしょうし、こんないい加減な事をしていて加入者から信頼を得られるのでしょうか?