yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

社員が進んで働く仕組み

この本を買って読んで、自分のところの社員も進んで働くようにできるかなあと思って手に取る経営者もいると思います。
しかし、買うだけ無駄です。
この会社のような経営を行うことは、するしないじゃなくて通常無理だからです。


社員が進んで働くしくみ 「働かされない働き方」が強い会社をつくる

社員が進んで働くしくみ 「働かされない働き方」が強い会社をつくる


この著者が社長でもある「希望社」という会社を以前何かのビジネス誌で呼んだ記憶があり、日本でも本格的なCM(コンストラクション・マネジメント)が出てきたのかなあという印象で当時は好印象を持っていました。

日本の談合に挑戦したり、本の中での色々な試みは結構面白く共感できる点も多々あります。しかしそれが本の読み終わった後では違和感が生じてきます。


まずこの会社がなぜかCM(コンストラクション・マネジメント)というコンセプトを捨てて単なるゼネコン・不動産業になった事。
CMという事業を日本でやるからこそこの会社の意味があるのに、それが最終的にはゼネコンであり不動産会社ですか?そのあたりの展開に関しての理由が本を読んでいてもよくわかりません。


また社員に収益型の住宅を所有させ、他に収入があり会社に依存しない自立した人間になればいい仕事をすると述べています。しかし私の経験上、資産家の子息等で不動産収入がある社員はあまり働きません。(これは当たり前だと思いますが…)


著者は自社の経営にかなりの自信を持っており、「世間一般の会社とうちはちがう。」「うちの会社のやり方は革新的で素晴らしい。」という自負がところどころ鼻につきます。

この会社は弱肉強食(完全成果主義、自動リストラ装置等)を地でいっている会社であり、優秀な社員しか会社に残れないこのような過酷な企業風土で、はたしてこの著者が述べているようなお客様が本当に喜ぶ仕事を社員が出来るのでしょうか?


これは、究極の顧客満足度を追求する組織であるプライベートバンクのピクテについて述べている文章です。

従業員の給料形態も独特です。完全に固定給なのです。運用成績に応じてということであれば、顧客の資産をリスクにさらしても高いパフォーマンスを目指そうとする人も出てくるでしょう。手数料の半分がコミッションとして懐に入る仕組みなら、手数料の高い商品ばかりをすすめることになりかねません。
だから成績が10倍になろうが、20倍になろうが給料は変わらない固定給を採用しているのです。
「日本の富裕層」臼井宥文著 より

固定給のレベルは違うでしょうが、著者が言うような本当に顧客満足度を追求するならピクテの方が王道でしょう。


私は会社というものは社会と一緒で、優秀な人間もいればそうじゃない人間もいないとバランスが悪いと思いますし、世間の普通の経営者はたとえその社員が優秀でなくても一生懸命仕事をする社員は雇用し続けると思います。
雇用という企業の社会貢献の一面を無視したこの企業スタイル、果たしてどうでしょうね?


それにしてもこの本は自慢本の一種で、題名を見て自社のマネジメントの参考のために購入する企業経営者の期待を裏切る内容ではっきりって詐欺みたいな題名のつけ方です。