yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

下流喰い

この前、TVでもおなじみの須田慎一郎氏の本を読みました。


下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)


この本を読んでブログに書こうと思っていたら、昨日この本に関連するニュースが流れました。

借り手保険、自殺は支払い禁止に…貸金業法改正案

政府の貸金業規制法改正案が24日明らかになった。

 出資法の上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(年20〜15%)の間のグレーゾーン(灰色)金利は3年後をめどに廃止するほか、消費者金融会社が借り手に加入させる「消費者信用団体生命保険」は自殺を理由にした支払いを禁止する。「命を担保に取って保険金を受け取っている」との批判が強いためだ。抜本改正後の法律名は「貸金業法」とし、政府が臨時国会に提出し、成立する見通しだ。

 「団体生命保険」は、借り手が病気や自殺などで死亡すると、保険金が生命保険会社から消費者金融会社に支払われ、遺族に債務負担が残らない仕組みだ。

 しかし、保険金目当ての取り立てが借り手を自殺に追い込んでいるといった社会的批判が強まり、大手消費者金融は相次いで廃止に踏み切っている。

 政府・与党は、病気などを対象とする団体生命保険なら契約を希望する顧客もいると見られるため、借り手が自殺した場合の支払いを含む保険契約に限って禁止することにした。ただ、禁止後、借り手が自殺した場合は債務は遺族に移ることになる。

 改正案は段階的に施行される。2006年末に見込まれる公布の1か月後に、ヤミ金融に対する罰則を懲役5年から懲役10年に引き上げる。取り立て規制の強化や業務改善命令の導入など法改正の中核部分は07年中に施行される。

 利用者が複数の業者から借り入れた総額を把握するための指定信用情報機関制度は09年ごろ創設される。灰色金利の廃止や年収の3分の1を超える貸し付けを禁じるなどの「総量規制」は2010年にスタートする見通しだ。

(2006年10月25日1時41分 読売新聞)

裏でこそこそと動いていた政治家や業界関係者の方、残念でしたね。


著者はこの本のなかで現在の消費者金融を「悪魔的ビジネスモデル」と述べています。

以前、武富士の幹部が著者にこのように言っていたそうです。
「ウチは、500万円も600万円も年収がある人にはカネを貸しません。ウチが貸すのは、せいぜい年収400万円まで。とくに年収200万円〜300万円の客は、ウチにとって優良顧客ですよ」

この言葉に現在の消費者金融の実態が良く出ていると思います。
つまり、サラ金から見たら元利をきちんと返済する客より、金利だけを払い続ける客が上得意になるのです。そのためサラ金は既存の顧客に「返済実績が出来ましたので、今より枠が○○万円増えました。どうぞご利用ください。」と借入の増額を勧め、元金が返済できない額まで貸し込むのが常套手段となっているようです。

この本によれば、200万円をサラ金から借りて月45,000円ずつ返済しようとすると、金利が18%の場合は返済完了に6年間かかるが、金利が27%になると45,000円は金利の支払いで消え元金はほとんど減らないようです。
この「6年で返済」と「永遠に完済出来ず」との差は年利で10%前後で生じるものであり、これこそが「グレーゾーン金利」の悪魔的トリックだと述べています。

年収200万〜300万の人たちにとって月45,000円と言う金額は、ほぼ限界ではないでしょうか?つまり金利だけしか払えない状態に顧客を引きずり込み、なおかつ顧客が自己破産等する事による貸倒れを盛り込んで会社を運営していけるのがグレーゾーン金利なのです。


またこの本ではヤミ金の実態も紹介しているのですが、一般の人間がヤミ金に流れるのは

大手→準大手→中堅・中小→ヤミ金

の順番で進むようで著者は「借金の連鎖」と呼んでいます。

つまりグレーゾーン金利がなくなると貸し渋りが起こり多くの人がヤミ金に流れるとサラ金擁護派は言っていますが、元々ヤミ金に流れる人間を大量生産しているのは大手サラ金なのです。


又この本によると金融庁はサラ金業界を毛嫌いしているようで、私もなぜ金融庁がサラ金に配慮するか不思議でしたがこの本を読んでなぜだかわかったような気がします。
つまりサラ金を配下に置くメガバンクや外資からの圧力(影響)が金融庁にあったのではないでしょうか?

いずれにせよ、サラ金業界の陰謀は潰れたようなのでひとまず安心です。
今回の法案が通ったら安倍政権不支持派になろうと思っていました。

今までサラ金業界を利用して儲けて来たテレビ局や新聞などのマスコミも、どの面下げて今ごろサラ金批判をしているのでしょうね?(特にサラ金から5000万円もらっていた朝日新聞)
ついでに法律でサラ金のTVCMとあのみっともない野外広告を禁止して下さい。


この本ではその他にも多重債務者の取材や外国の消費者金融の実情などもあり、機会があればぜひ一度お読み下さい。