yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

朝青龍の申告もれについての税理士としての感想

1億円の申告もれ位はたいした事ではない??というのが一般常識からずれた感覚の日本相撲協会らしい見解ですが、今回の申告もれについて税理士としての感想を述べたいと思います。

朝青龍が1億円の申告漏れ、結婚披露宴のTV出演料
大相撲の横綱・朝青龍(26)が、テレビ中継された結婚披露宴の出演料などを申告していなかったとして、2005年までの3年間で約1億円の申告漏れを東京国税局から指摘されていたことが、関係者の話で分かった。
追徴税額は過少申告加算税なども含め3000万円に上るとみられ、横綱は今年5月ごろ修正申告に応じた。
横綱は04年8月、モンゴルと東京の2か所で結婚披露宴を開いた。都内のホテルで行われた披露宴には、国会議員やスポーツ選手など約800人が参加し、民放テレビ局が中継した。
関係者によると、披露宴はテレビ局がほとんどの費用を負担、横綱には出演料が支払われた。横綱は05年の確定申告で出演料の一部を申告したが、同国税局から、テレビ局が負担した披露宴費用は横綱側が負担すべきで、残りの出演料とともに、「雑所得」として申告すべきだと指摘されたという。コマーシャル出演料などにも申告漏れがあった。
2007年8月27日(月)12:29
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/nation/20070827i103-yol.html

まず

同国税局から、テレビ局が負担した披露宴費用は横綱側が負担すべきで、残りの出演料とともに、「雑所得」として申告すべきだと指摘されたという。

と聞いたとき、最初税理士の私でも「なんで???」と思ったのですが、よく考えてみれば所得税における所得とは「収入金額−必要経費」という考え方が基本です。
そしてその収入金額とは以下の通りに定められています。

所得税法 36条 収入金額
1 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

従って、テレビ局が負担した披露宴費用というのは朝青龍がお金を受け取っていなくても、間違いなく経済的利益に該当し課税の対象となると思います。
パートナーのid:saimoto君とも話をしていたのですが、「これは仕方ないかもしれんなー。」というのが、二人の共通した感想です。
今回はこの申告もれの犯人を推察してみようと思います。


犯人1 朝青龍(もしくはマネージャー)

そもそも税理士の私でさえ最初は??と思ったので、朝青龍(もしくはマネージャー)がTV局に負担してもらった費用が所得となるとは全然思っていなかったかもしれません。従って税理士にもそのことを連絡していなかった場合、当然申告もれとなります。

犯人2 税理士(もしくは税理士事務所職員)

この可能性も捨て切れません。

  • 朝青龍(もしくはマネージャー)

「いやー今回の披露宴はTV局が費用を負担してくれるんですよ。」

  • 税理士(もしくは税理士事務所職員)

「あ、そうですか。いいですねー。」
と税理士(もしくは税理士事務所職員)が内容を聞いてても課税対象になるという認識がなかった可能性も大いにあります。

犯人3 TV局

そもそもTV局が有名人の結婚披露宴の費用を負担するというのは今回が初めてではないでしょう。過去にも数多くあったでしょうから、TV局には課税対象となるという認識はあったはずです。
このようにTV局が披露宴の負担をした場合その額は課税対象となりますよとアドバイスする義務があるのではないでしょうか?過去に数多くの有名人が申告しているはずです。
朝青龍が申告しようにも、負担してもらった額をTV局から教えてもらわない限り申告は不可能です。


感想
他の出演料のごまかしの分は別ですが、今回の披露宴の費用負担については芸能人の申告を数多くしていて経験のある税理士じゃないと申告もれになる可能性が大いにあり(私でもするかもしれません。)あまり悪質性は感じません。
逆に税理士の責任を感じますね。そもそも顧問税理士は普通に考えたらその披露宴に招待されているはずでそこで気がつくべきです。
しかし相撲協会や親方も横綱をほったらかしにせず、キチンと有名人・芸能人の申告を数多く手がけている経験のある税理士事務所を紹介すべきですね。