yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

士業のワンストップサービスは本当に求められているのか?

税理士新聞の2007年10月15日号に「ワンストップサービス」の記事が出ていました。

各士業とネットワークを構築し、ワンストップサービスを提供する会計事務所が増えてきた。だが、単に知人の資格者を「紹介するケース」も多く、その結果、依頼者は各士業の事務所に足を運び、相談内容を改めて説明するなど、二度手間、三度手間になっているケースも少なくない。こうしたなか、究極のワンストップ・サービスを目指し、新しい事業スタイルを確立する動きが出てきた。

記事では、税理士・弁護士・司法書士・公認会計士が株式会社を設立してサービスを提供している事例や、税理士・弁護士・社会保険労務士・行政書士・司法書士の各法人が、同一名称で同じフロアに事務所を置き現在5つの都市で営業展開している事例などを紹介していました。

確かにワンストップサービスや色々な士業のネットワークを売りにしている税理士事務所も結構あります。
私の事務所でも

など、他士業との連携には力を入れています。

税理士は他の士業と違い顧問契約という形で常時顧問先と接点があるため、他士業への窓口となる機会がかなり多い職種です。
少し前の規制緩和に絡んで、国民の利便性向上のため各士業が合同で運営できる総合事務所の設立を検討してはどうかという話や、この記事のように依頼者が二度手間三度手間かかり不便だという論調の記事が出たりします。
しかし長年いろいろな話の窓口となった経験からすると、本当に依頼者がワンストップサービスを求めているかどうかは大きく疑問です。

例えば私が以前勤めていた事務所は結構大きな会計事務所で、当時は司法書士や社会保険労務士、中小企業診断士や宅建主任者も事務所に在籍していました。
しかしそれは別に依頼者の利便性の為などではなく、総合的な相談窓口として自分の事務所をアピールする営業戦略であったり、顧問先の他士業ニーズを自分のところで取り込むための方法でした。
そしてその会計事務所に所属していたそれらの士業の人は、営業力もあまりなくモチベーションも低かったです。まあ元々優秀な人間なら会計事務所などにぶら下がらず自分で独立してますよね。

はっきり言って本当に営業力のある一流の事務所は、合同とかワンストップサービスとかは考えていないと思います。新聞の記事のような動きは、自分達だけでは営業力に不安のある人たちが集まった「弱者連合」のような気がします。

依頼者からすれば、信用が出来きてしっかりとした仕事の出来る他の士業の方を紹介してもらえばいいだけで、本当にワンストップサービスを求めているという話は聞いたことがありません。
例えば手間がかかるというならどこかの事務所に他の士業の人が来て,そこで常時打ち合わせをしてもいいですし、依頼者の利便性を高める方法はいくらでもあります。
私の事務所では色々な士業の先生の得意な分野を勘案して紹介しているため、依頼者にもこちらの方がメリットが大きいと思います。


士業のワンストップサービスの話は各士業の営業戦略上の話で、本当に依頼者の為の発想かといえば私は違うと思います。