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yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

自己株式の売買についての私的意見

またまた自己株式の話です。

私が所属する税理士会支部で今期から研修委員をしているのですが、今年の年末に行う支部の研修のテーマが「非上場株式の税法上の売買時価」というテーマで研修内容を委員で集まって検討しています。

この非上場株式の時価という考え方は税法によって違うのですが、昨今では非上場株式の売買となると自己株式の取り扱いを避けて通れません。自己株式とはその名のとおりその会社が発行している株式の事です。

法人税における時価とは法人税基本通達9-1-14において定められているのですが、問題は株式の発行会社が自社の株式の売買を行う場合です。

法人税法基本通達で定めている時価で売買すれば特に問題は起きないのですが、ケースとしては以下のケースが問題になると思います。

  • 自己株式を買い取り

①時価より高額で買い取り
②時価より低額で買い取り

  • 自己株式を売却

③時価より高額で売却
④時価より低額で売却


発行会社の売買の相手方の税務に関してはそれぞれ各税法で規定されていますので今回は言及しませんが、問題となるのは発行会社の税務上の取り扱いです。

法人税においては平成18年度の税制改正において、株式の発行会社において自己株式の取得・処分は「資本等取引」として取り扱われる事になりました。<法令8①一>

また法人税法においては各事業年度の所得の金額の計算において、資本等取引に該当するものを除き、資産の販売、有償または無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲り受けであっても、収益の額に計上しなければならない事を規定しています。

従って株式の発行会社においての自己株式の取引は資本等取引ですので、取得・売却に係る取引は基本的に課税所得に影響を及ぼす事はありません。


私も基本的にこの考えで、発行会社がどんなに高額または低額・無償の取引を行っても課税所得に影響を及ばないという考え方です。(ただ取引相手及び発行会社の株主は高額または低額・無償取引を行った場合は、寄付金・みなし譲渡・みなし贈与等により課税所得に影響がでるケースもあります。)


国税庁のサイトに掲載されている清水秀徳氏の研究論文でも同じ考え方ですね。
http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/66/12/


新日本監査法人の本も基本的にはこの考え方ですね。

自己株式の会計・税務と法務Q&A

自己株式の会計・税務と法務Q&A


ただ色々な本やサイトを見ていると①と④は相手方に対する寄付金、②と③は相手からの受増益になると主張している人が多数います。


税理士法人タクトコンサルティング
http://www.higashi-nipponbank.co.jp/pdf/consul/news40.pdf

日本ビズアップ
http://www.mit-morita.co.jp/img/freelink/k_r/tax/tax_repo24.pdf

タビスランド
http://www.tabisland.ne.jp/explain/kabushiki/kabusiki_6.htm


ただ寄付金・受増益になると主張されるのはいいのですが根拠条文等が一切提示されていません。


繰り返しになりますが法人税の自己株式の課税所得に係る条文等は<法法22>と<法令8①一>しかありません。寄付金・受増益になるというのは、平成18年の改正前の自己株式を資産として取り扱っている頃の感覚で主張されているような気がしますね。


現状では条文や通達で規定していない以上、発行会社が自己株式をどんな価額で取引しても、発行会社の課税所得には一切影響を及ぼさないと思います。(私的意見)


※まあ通常は基本通達の時価で売買すると思いますので、変な節税スキームが出てきて極端な価額の売買事例が出て問題になってきたら何らかの改正になる気はしますね。