自己株式を買い取ってもらった場合の個人に対するみなし配当の考え方っておかしいでしょ??
自己株式とはその名前のとおりその会社が発行した株式を自分自身(会社)が買い取る事が出来る制度です。
最近は使い勝手絵の良さから中小企業でも株の整理の時や相続税の納税の為などに使うケースが増えてきています。
この前ある顧問先からの相談で、株を整理したいというお話がありました。
そこで自己株式の事を説明して薦めたのですが、調べていくと今回のケースはなんじゃこりゃっていう取り扱いにぶつかりました。
自己株式の買い取りについて何度か経験あり、税務上の取り扱いは自分自身では理解していたのですが、改めて調べるとすごい不合理な点があります。
それは売った個人株主の方の税務上の取り扱いについてです。
自己株式を発行会社に売却した場合は売った方からしたら株の譲渡のように思えますが、税務上の取り扱いは以下のようになっています。
買取価格-資本等の金額=みなし配当(配当所得)
資本等の金額-株式の取得価格=株の譲渡損益(譲渡所得)
中小企業の場合は一般的にはプレミアム付きで増資を行いませんから基本的には
資本等の金額 = 株式の取得価格
となります。
今回相談があったケースは以前に社長から役員に時価で売却した株を今回会社で時価で買い取るというケースです。
極端なケースで例にすると
100万円の資本金の株を社長が役員に時価500万円で売却して、今回会社がその役員から時価500万円で買い取るケースとします。
この場合みなし配当は
500万円(買取価格)- 100万円(資本等の金額)=400万円
株の譲渡損益は
100万円(資本等の金額)- 500万円(株式の取得価額)=△400万円
このようにこの役員が500万円で買った株を500万円で会社に買い取ってもらうと、実質的なもうけは0円なのに配当所得400万円が課税されるというとんでもない事になります。
- 所得税の場合は株の譲渡所得△400万円は他に株を売った利益があれば通算できるがなければ切り捨て。
- 上場株式等については株の譲渡損と上場株式等の配当を通算できる制度あり。
- 法人については譲渡損も認識されて法人の利益から控除され、なおかつ受取配当等の益金不算入制度が利用できるためみなし配当の額が多ければ多いだけ有利。
本も買いましたがこの本は法人の処理がメインで個人株主が売った場合についてはほんの少ししか記述がありません。
- 作者: 石井裕介,新日本有限責任監査法人,新日本アーンストアンドヤング税理士法人
- 出版社/メーカー: 清文社
- 発売日: 2013/03/22
- メディア: 単行本
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取り扱いはこれで間違っていないと思いますが、違っていたらコメントお願いします。
現時点では所得が無い所に課税するなんてものすごく不合理だと思います。担税力が無いのに課税する事は所得税の基本的な考え方からしておかしいと思いますね。
上場株式等と同様の損益通算の制度が出来る事を望みます。