自己株式の売買についての私的意見 追記1
昨日は「自己株式の売買についての私的意見」というエントリーを書きましたがその追記です。
支部の研修委員で自己株式の売買における発行法人の税務上の取り扱いについて議論していたのですが、私の意見は発行法人が自己株式をどんな価額で売買しようが資本等取引に該当するため、発行法人の課税所得には一切影響が無いという意見なのですが、委員の先生の中にはやはり高額および低額で売買した場合は寄付金・受増益が発生するという意見の先生もいらっしゃいました。
その意見の大きな根拠とされたのが以下の本の記述です。
- 作者: 由比祝生
- 出版社/メーカー: 大蔵財務協会
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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その本の99ページで
「非上場株式を低額で発行法人に譲渡した場合の取扱い」という設問で解答の中に以下のような文章があります。
ただし、自己株式の売買価格を時価より低額とした事が、何らかの利益移転を目的とした損益取引と資本取引とを抱き合わせした結果であると認められる場合には、売買価格を時価に引きなおしたところにより課税関係が整理されることもあると思われます。
とあります。
普通に読めばこれは暗に安すぎたら受増益として認定される可能性もあるよと言っているのだと思います。
大蔵財務協会というのは国税庁の直轄の団体でもあり、実務家からするとある程度ここの本には国税庁の意見が入っているものと認識されています。
これを見るとそうなのかなあとも思いましたが、自己株式の改正が平成18年でこの本は平成19年版と少し古く、改正の内容がちゃんと反映されているか疑問でしたので最新刊を取り寄せて確認してみました。
- 作者: 村上幸宏
- 出版社/メーカー: 大蔵財務協会
- 発売日: 2013/08
- メディア: 単行本
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本が届いたので中を見るとなんと以前の設問自体が消えていて、代わりに
- 法人が自己株式を取得した場合の課税関係 P122
- 法人が自己株式を譲渡した場合の課税関係 P128
という2つの設問になっていて、内容を見ると高額および低額で売買した場合の取扱いについては一切触れていません。
以前と同じ見解なら普通に考えて設問も変えないでしょうし同じ記述を残すと思います。やはり自己株式の改正に伴い、発行会社が行う自己株式の売買はすべて資本等取引という認識に国税局もなったものと思います。
改めて言いますが発行会社が自己株式をどんな価額で取引しても、発行会社の課税所得には一切影響を及ぼさないと思います。(私的意見)