yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

搾取される若者たち

本屋で何気なくペラペラと見ていたら結構面白そうな内容だったので購入しました。読む気なら1時間程度で読み終わる本です。

搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)

この本はバイク便という仕事を通して、バイク便のライダーが入社してから次第にワーカホリックのように働くようになるまでを観察・分析しています。

最初にバイクが好きで入ってきた社員が、時給ライダーを経て歩合給ライダーになっていき、それに伴って変化してくる価値観と働き方をなかなか鋭く分析しています。

中でも印象的だったのが、著者がバイク便ライダーがワーカホリックのようになるよう作られていると分析した社内の仕組み(トリック)が、経営者が考えたのではなく、実はそこで働くライダー達が選んだ仕組みだったというところです。

しかしあまり知りませんでしたが、バイク便ライダーというのはあまり恵まれた仕事ではないようです。バイク便ライダーの憧れが「ミリオンライダー」と呼ばれる月の売上が100万円以上の歩合給のライダーらしいですが、その歩合が40%〜50%程度のようで月にすればよくて50万円です。その中からバイクの部品代・ガソリン代・保険代等の経費を引くととても憧れる様な給料(請負のようなので給料ではなく収入ですね。)ではないと思います。

明日の保証もなく、怪我をしたとたん無収入になる不安定な職業であり、そのような環境下でもワーカホリックのように働くライダー達・・・
しかしやがて訪れる仕事中の事故による怪我の後遺症や死亡事故、その他にも排気ガスの吸いすぎによる健康被害などによりいつかは辞めなければならない現実・・・

著者はワーカホリックのように働いていい職業と働いてはいけない職業を、冷静に判断して仕事をするべきだと述べています。

その他にもワーカホリックになりそうな職業として

トラック運転手
ケアワーカー
SE
などを挙げています。中でもケアワーカーは「自己実現系ワーカホリック」として著者が現在研究中のようです。

また著者は村上龍氏の「13歳のハローワーク」を「無責任な自己実現を促す職業教育」と批判しており、いくらバイクが好きでも13歳でバイク便のライダーになる事を決めてはいけないと述べています。(大きくなって総合的な判断が出来るようになってからバイク便の仕事を選ぶのは本人の自由とも述べています。)
確かに著者の述べているようにその仕事の将来性・経済性も重要で、仕事を選ぶ時の総合的な判断の必要性を感じますね。

実は私もこの本を読むまでは、「自分が好きな仕事をしたらいい」派でした。
過去ブログ http://d.hatena.ne.jp/eqyoshi/20060728/p1
それはたまたまこの税理士業界の仕事が私自身けっこう好きで、また経済的にもある程度恵まれている業界の人間の発想かもしれません。少し改めます。

この本の題名は「搾取される若者達」としていますが、話の中心であるバイク便の会社の経営者が特にライダーを搾取しているわけでもなく内容と題名がちぐはぐでしたね。現在の下流社会・格差社会ブームに少し便乗している題名の付け方ですね。

しかし私は昔バイクに乗っていたこともありバイク便の話を中心としたこの本はわかりやすく面白かったですね。著者は社会学者のようですが、次回作を期待します。