yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

これは安い、電子申告ソフト


NTTデータ、個人向けの確定申告用電子申告ソフトを発売へ

会計ソフトのデータも取り込めて1,980円とはずいぶん思い切った価格設定ですね。確かに今年度分から国税庁HPの確定申告書作成コーナーから直接電子申告できますので、差別化と低価格化が必要ですね。

今年は国税局も電子申告に力を入れているようで、この前も所轄税務署の担当官の方がいきなり事務所に来られて、個人の確定申告を出来るだけ電子申告して頂くようにと協力を要請されました。
今度の確定申告から税理士の代理署名だけで電子申告が出来ますので、私たちの事務所でも半数は電子申告する予定です。

申告是認に対する私的意見


一般の方はあまり聞きなれない言葉ですが、私たちの業界ではよく「申告是認」という言葉が話題になります。
申告是認」とは、税務調査において修正申告すべき点が無かった事を言います。
通常、税務調査では調査官からの指摘点を修正する修正申告書を提出するケースがほとんどで、申告是認になるのは調査全体の数%と思います。

なぜ、今回私が申告是認の件で書きたくなったのかといいますと、ある税理士のブログに税務調査の話が書かれていたのですが、その税理士は本人曰く1点だけミスをしたらしく次は申告是認を目指しますと書かれていたのが気になったからです。

確かに申告是認というのは余りありませんので喜ばしいことではありますが、それは結果論の話で、最初から申告是認を目指すのはちょっと違うのではないかと思います。

もちろん税理士のミスによる修正申告は出来るだけ無くす様に努力する事についてはなんら異論はありません。
しかし御存知のとおり税法には「グレーゾーン」というものが存在します。
税法というものは人間(法人を含む)の経済活動に対して課税するための法律です。しかしすべての経済活動について法律で規定するのも困難ですし、すべてのケースについて一律的に該当する条文等を適用することも困難です。
従ってどちらとも判断がつきかねるグレーゾーンについては、申告する当事者と税理士が話し合って申告をすることになります。
グレーゾーンについては、税務署側と調査時に意見が食い違うことも出てくると思いますが、申告是認を目指すのという事は、そのグレーゾーンをすべて税務署に有利な判断で申告するということです。
つまり本来は認めてもらえたかもしれない処理について、最初から放棄するということになりかねません。
またそもそも申告是認を依頼者が求めているかというとそうでもない気がします。もし求められれば税理士としては保守的なガチガチの処理をせざるを得ないようになります。
私はどちらかというと「社長、これについては調査でどうなるかわかりませんが、今回は強気で行ってみましょうか?」というのが好きですね。

ホームページ制作費用の税務上の取扱い

週刊税務通信平成19年10月8日号の特集企画で「ホームページ制作費用の税務上の取扱い」という記事がありました。

この記事によると、ホームページ作成費用でも内容によって以下の取扱いになることと述べています。

広告宣伝費に該当し支出時に損金となるもの

  • 会社の概要や商品の説明を記載
  • 資料請求フォーム
  • SEO対策

ソフトウエアに該当し5年で償却となるもの

  • 自社製品を検索する機能
  • オンラインショッピング機能
  • 「ログイン/パスワード」入力機能
  • インターネット予約機能
  • 動画
  • ゲーム機能

記事を細かく見ていくとおかしな点も結構あります。(動画がソフトウエア??)またこの話は突き詰めると「ソフトウエアとは何か」というものすごく大きなテーマになってしまいますのでなかなか難しいテーマでもあります。
ただこれは法律でも通達でもなく週刊税務通信としての見解なので、個々の事例は各税理士が判断して申告する事となります。
まあ記事は実際にはちょっと厳し目の判断だと思いますし、税務調査でこのような点が指摘されるかな?って気もします。
また中小企業の場合ソフトウエアも30万円未満の少額減価償却資産の損金算入特例がありますので、よほど高額なホームページを作成する場合以外は問題になる事は少ないと思います。
まあとりあえずは昔と違いホームページも高度なものになってきていますので、無条件で広告宣伝費にはせず一度大丈夫か検討してみることですね。

税務署が所得税申告書を紛失

これは前代未聞でしょう。

所得税申告書199人分を紛失 東京・西新井税務署

http://www.asahi.com/national/update/0801/TKY200707310526.html
 東京国税局は31日、西新井税務署(東京都足立区)で、納税者が提出した06年分の所得税の申告書199人分を紛失したと発表した。申告書には、納税者の名前、住所のほか収入額などが記載されているが、これまでのところ外部に流出した形跡はないという。
 同局によると、申告書はバインダー1冊に約100枚ずつとじられ、通常は書庫に保管されている。6月末の点検時には593冊すべてそろっていたが、7月18日に内容を再点検した際に2冊がなくなっていることに気が付いたという。
2007年08月01日00時23分 朝日新聞

確定申告書は個人情報の塊みたいなものです。最近の確定申告書はOCRなので既にデータは読み取っていると思いますが、いくらなんでも杜撰すぎます。

セカンドライフと税金 その1

今週の月曜日、NHKのクローズアップ現代で「セカンドライフ」についての放送がありました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2007/0706-3.html

ここで一言断っておきますが、私自身はセカンドライフをしていませんし、この新しいサービスに対する専門的な評価をする立場でもありません。
番組の中ではある人(名前を覚えていませんので仮にA氏とします。)が、セカンドライフに最初に500万を投資?して、セカンドライフの中で島を購入し、その島を他の人に貸して賃貸収入を得ている事を紹介していました。
このセカンドライフで流通している通貨はリンデンドルと呼ばれ、現実の通貨と交換が可能でドルとの相場も毎日変動しているようです。
現在、A氏は数十の島を持ち月間の収入が数百万円となり、その事業?で生計を立てているようです。

ここで、税理士として気になるのは「税金」の問題です。

最近では各国でもセカンドライフの所得に対して課税の検討に入っているというニュースも何回か聞きました。日本はこのような新しい動きに対しての反応はいつも鈍い方ですが、A氏ような人が既に出現している現実を考えると早急な対応が必要だと思います。

セカンドライフで収入を得ている人が実際に申告するかどうかは別にして、このA氏に対しては間違いなく課税が発生すると思います。今回はこのA氏対する課税について税理士として考えてみたいと思います。(A氏は個人でセカンドライフに参加していると仮定します。)

まずA氏ですが明らかに日本に居住していますので居住者となり、全世界の所得に対して日本の所得税が課税され、また1月1日に日本に住所を有していれば住所地の住民税が課税されます。従って税金を支払うのが嫌ならタックスヘイブン等に住所を移すのも一つの方法ですね。

その所得税ですが番組内ではA氏はアシスタントのような女性を雇用しているようですし、収入も年間数千万円になると思われますので、雑所得ではなく事業所得に該当すると思います。またセカンドライフ内の土地を貸していますが、現実的な不動産ではないので不動産所得ではなく事業所得でいいと思います。

事業所得の場合、基本的には

収入金額 − 必要経費 = 事業所得

となります。
このようにするとすごく簡単に見えますが、セカンドライフの場合この収入金額と必要経費の考え方に大きな問題が含まれています。

まず収入金額ですが、所得税における収入金額とは以下の通りです。

所得税法 36条 収入金額
1 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

まず1項で収入金額とは、「その年において収入すべき金額」となっており、これはその年で収入が確定したものは収入金額に計上してくださいという意味です。また収入金額には、金銭以外のものも含まれるとはっきり書いています。
素直に読めばリンデンドルが現実の通貨と交換が可能である以上、リンデンドルを現実の通貨に換金した時ではなく、セカンドライフで事業を行いリンデンドルで収入があったときに収入として計上しなさいという事になると思います。

しかし、現実的にはどうでしょうか?
リンデンドルの収入があっても、換金せずセカンドライフ内ですべて消費する人も数多くいると思います。(こちらのほうが多数派?)
これらの換金しない人達にまで、リンデンドルの収入があればすべて課税というのも現実的ではないと思います。従って実際の運用では金額により換金時に課税という考え方もあると思います。

次に必要経費ですが、これも多くの問題を抱えていると思います。
所得税では以下のように規定されています。

所得税法 37条 必要経費
1 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

簡単に言えば必要経費とは、その収入を得るために必要な経費で債務として確定しているという事です。
そこでA氏ですが、最初に500万円を投資して島を購入したと番組で紹介されていました。島となれば現実世界であれば島は不動産であり非償却資産です。
しかしセカンドライフでは、島であろうが服であろうが食べ物であろうがすべて仮想でありそこに差はありません。そうなるとこの島を購入した金額の経理処理は大きく悩むところとなります。
1年間で経費にしていいのか、この島をベースに賃貸収入を得ているのだから税法上の繰延資産として数年間で償却するのか、ソフトウエアのように無形固定資産とするのか、それとも現実の不動産のように非償却資産となるのか、ここは判断が分かれるところだと思います。
とくにA氏の場合は賃貸して得た収入をおそらく再投資して島を購入し、今では何十島も所有しているとの事ですので、この経費処理の判断次第で税額は大きく変わってくると思います。
そのほかにもセカンドライフ内で発生する費用については、様々なケースで悩む事となると思います。
それに比べれば、現実社会のA氏の経費は今までどおりの考え方でいいと思います。
事務所の賃料や光熱費、PC関係の費用や通信費、スタッフの給料等は必要経費となり、こちらはあまり悩まなくていいと思います。
実際にはセカンドライフにおける税金の取扱いのようなものが、国税庁から発表されるとは現時点では思えませんので、申告を依頼された税理士は大きく悩む事になるでしょうね。
又機会があれば、セカンドライフの課税について考えてみたいと思います。

優良企業の経営者は節税に熱心ではない。

神保圭一氏の「SMBの経営カイゼン」というコラムはいつも拝見しているのですが、今回のコラムもいい内容です。

http://journal.mycom.co.jp/column/smb/004/index.html

私も仕事柄色々な経営者にお会いしますが、「優良企業の経営者は節税に熱心ではない」といのはまったく同感です。
このシリーズの他のコラムも秀逸です。ぜひ読んでみてください。