yoshida's blog

京都で税理士をしている吉田貢のブログです。

賢い会計事務所選び7つのポイント

弥生会計でおなじみの弥生株式会社が発行している「中小企業のための会計事務所120%活用ガイド」という本(冊子)があります。


この本は、弥生会計の「PAPゴールド会員会計事務所」の全国341会計事務所を紹介している本です。
その中で「賢い会計事務所選び7つのポイント」というコーナーで会計事務所の選び方について述べています。*1
以下が会計事務所を選ぶ7つのポイントとしています。

  1. 料金体系のはっきりしている会計事務所
  2. お客様第一主義の会計事務所
  3. 情報量の多い会計事務所
  4. “経営”に強い会計事務所
  5. パートナー意識のある会計事務所
  6. 自計化に積極的な会計事務所
  7. 得意分野を明確にしている会計事務所


なかなか面白いテーマなので、自分達の事務所が出来ているかも含めて検討してみました。


1.料金体系のはっきりしている会計事務所

私達の事務所では大まかな目安はありますが、料金表のようなものは存在しません。つくりかけたときもあったのですが、これには結構難しい問題があります。
一番の問題は顧問先に提供するサービスの内容や業務量が一社一社全て違うという点にあります。
例えば同じような年商でも業種によっては仕訳数が全然違いますし、エクセルなどでキッチリ出納帳をつけれる方もいれば、現金管理がまったく出来ない方もいます。また毎月来て欲しいというお客様もいれば、3ヶ月に1回でもいいとおっしゃるお客様もいます。
料金表の必要性は感じているのですが、数値化するのが結構難しい上個別の状況も全て網羅する事が出来ないため、現時点では企業の詳しい状況や希望などをお聞きしてから見積書を提示して説明もするようにしています。


2.お客様第一主義の会計事務所

これはサービス業にとっては当たり前のことなのですが、税理士という職業は少し別の観点もあります。
税理士法第1条では

第一条
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

とあり、公正な立場も求められています。
お客様の利益を第一に考えて業務を行う事はもちろん当然ですが、本当にお客様のことを考えるなら時には制止や苦言を呈することも必要です。
この辺りのバランスをいつも念頭において業務をしているつもりです。


3.情報量の多い会計事務所

これは結構抽象的なポイントだと思います。
確かに現代は税理士一人が膨大な情報を把握する事は困難であり、私達のように税理士法人を設立して複雑化している税法などに組織で対応しようとしているケースも多いように思えます。
ただこれはやはり今でも個人の資質による部分が多く、組織でどう取り組んでいくかは課題ですね。
情報量でいえば大規模な事務所にはそれなりの情報が集まるでしょうが、実際にはそれを社内で共有できるかどうかがポイントだと思います。
情報共有でいえば私達の事務所は税理士法人を設立した時からグループウエアを導入していますし、パートナーの載本先生や職員ともいつもディスカッションしていますので他事務所よりは進んでいると思います。


4.“経営”に強い会計事務所

これも抽象的なポイントです。
お客様の中には税理士に経営コンサルティングの力があると誤解されている方もいますが、税理士が出来るのは財務や税務を中心としたコンサルティングです。
また経営に関する知識の習得についても熱心な税理士もいれば全然無関心な税理士もいます。
私自身は経済・経営の本やビジネス誌なども読んで出来るだけ情報を集めるようにはしていますが、職員も含めた事務所全体となるとまだまだですね。


5.パートナー意識のある会計事務所

元々、私達の会社である「税理士法人パートナーズ」という名称は、私とパートナーの載本先生がパートナーシップで運営していく法人という意味以外に、顧問先の良きビジネスパートナーになりたいという意味が込められています。
また一緒に運営している会計法人である「株式会社イコール」も、お客様とイコールパートナーの関係で仕事がしたいという意味があります。
その意味では、他の事務所と比べてもパートナー意識は強い事務所だと思います。


6.自計化に積極的な会計事務所

これも自信があります。
現在事務所では、エプソンの「財務応援」、弥生の「弥生会計」、OBCの「勘定奉行」、TKCの「FX2」などお客様に会った会計ソフトを御提案させていただいています。
ただ無闇に進めているわけではなく、領収証を預っての記帳代行業務もお客様のニーズがあれば対応しています。自計化の比率自体は他の事務所と比べても高い方だと思います。
(しかしこのポイントは弥生が会計ソフトを販売する会社としては強調したいポイントでしょうね。)


7.得意分野を明確にしている会計事務所

これはあまり出来ていないかもしれません。
ただ事務所としては、法人税・事業承継を含んだ相続税対策や相続贈与の申告など税理士業務についてはほぼ満遍なく高いレベルの業務が出来ると自負はしています。
ただマーケティングの戦略上はもっと得意分野を全面に出す必要はあると思います。



基本的には選ぶ立場からするとまあ妥当な内容だと思うのですが、この列挙しているポイントは特に新しい視点でもなく、昔から業界でいわれている事をまとめているに過ぎません。
ただこの7つのポイントを全てクリアしている事務所は全国でも少ないと思います。
この通りに出来たらそれはそれで顧問先も増えると思いますが、わかっていることと出来る事はまったく違います。

「わかっているのに出来ない。それが税理士業界。」

*1:まあこの本自体は本当に会計事務所を探している人が手に取るかというとはなはだ疑問で、「PAPゴールド会員会計事務所」に対する一種のポーズでしょうし、紹介している事務所が7つのポイントをクリアしているとは到底思えません。